2005年5月12日(木)
no.21 忘れられた命の詩 ハンセン病を生きて 谺 雄二 著
忘れられた命の詩
ハンセン病を生きて

谺雄二著

ポプラ社 
1200円+税
 
1987年発行
上記画像は
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あなたは「ハンセン病」を知っていますか?


あなたは「ハンセン病」を知っているだろうか?
知らない方が多いのかもしれない。
知らないとしたら、次の二つの事はどうだろうか?

(1)黒川温泉でのアイスターによる宿泊拒否問題
(2)SMAPの中居正広主演の「砂の器」というドラマ


これは両方ともハンセン病が関係している話題である。
(1)は以前説明した。(2)については原作をあたってみて欲しい。

私達が知らないだけであり、この問題はまだ終わっていない。そういう問題である。
この問題をはじめ、今の社会ではたくさんの差別が残っている。HIV,C型肝炎などの薬害、部落差別、在日への差別、そしてこのハンセン病への差別。それらは私たちの気付かない所で続いており、そして気付かない≒知らない故にその差別が続いているのである。

ハンセン病に関して言えば、元来が感染力の弱い病気であり(国による看護の歴史で看護者が感染した例は一つもない)治療法が確立した今、治る病気であり、且つ、生活環境の改善された今、新たな発病者は殆どいない現実があるのである。
かつてはその皮膚がただれる等の病状、遺伝病では?という誤解などから差別されていたが、上のような現実の今、その理由すらも今や存在しないのである。(詳細は明日)

しかし(1)のような問題は起き、また表面化していないだけで診療拒否等様々な問題も依然として存在しているのである。

さて、今日の本についてである。

 この本はハンセン病に罹った方の半生、主に青年期までが綴られたものである。この方の半生を通して、ハンセン病の方の置かれていた現状を知る事が出来る。そして更に、青年期の頃が中心に綴られている為、私たちの世代は自身に重ね合わせることが出来るのである。あなたが、その立場に立たされたらどうするだろうか?それを考え、この問題の事の大きさを知って欲しい。

 重い事実が多くある。強制隔離の事実。十分な治療が為されていなかった事実。優生政策の事実。今では信じられないが、それが公につい最近まで行われていたのである。(国の責任が認められたのは2001年である)このような事実がこの本を読んでいく中で分かってくる。

 私はこの本の著者はじめ、何人かのハンセン病の元患者の方に幸運にもお会いした経験がある。その時、聞いた言葉の多くが忘れられないものであるが、その中でも次の言葉が今も印象に残っている。

「今、北朝鮮による拉致が問題になっている。しかし我々は日本国家に拉致され、半世紀隔離等の差別を受けてきた。」

北朝鮮の拉致、私達は良く知っていて、それに憤りを覚え、怒りに震える。しかしハンセン病の問題は知らない故に考えてみればこの人が言うとおり、北朝鮮の拉致と同じ、それ以上の事が成されていても憤りも覚えなければ、怒ることもない。それは結果として差別の現状を容認する事へもつながる。

では見えない、知らない故に誰かを傷つける事、差別することは許されることだろうか?
私はそれは決して許されないことだと思う。

私たちは出来うる限り自由は保障されるべきである。
しかし、その自由は当然ながら、他人の権利を侵害しない限りにおいてではないだろうか。
それはやはり見えない、知らない故に傷つけ、差別する事をしない事も含まれると思うのである、
消極的加害者にならない事が必要だと思うのである。

その為に、どのような形であれ、この病気のことを知って欲しい。
この本は子ども向けの本である。そういう意味で”知る”第一歩としてこの本を読んでいただければ幸いである。

 ※ハンセン病。ノルウェーのハンセン医師が発見した「らい菌」という細菌による感染症。かつては「らい病」と呼ばれた。外見に変化がある事が多く(皮膚のただれなど)、また原因が長い間分からず、遺伝病と誤解されたりもしていた。その為、国家ぐるみでの差別が行われた歴史がある。(らい予防法の制定、無らい県運動等)
 ハンセン病の感染力は非常に弱く、日常生活での感染は殆どない。戦前はその生活環境の悪さの為、後は特効薬がない事、それらにより、感染者を生む結果となっていた。
 今では、完全に克服された、そして感染力も弱い病気、それがハンセン病である。


追記2008/12/14
このサイトを休止して大分立ちますが、今は温泉、特に湯治場変遷誌を専門に研究をしております。そちらの方面からこのハンセン病の問題に私なりにアプローチする文章を書きます。
書いたら、当サイトでも今回はアップしようと考えております。


あと、清水…今は西武の選手。時代の流れを感じます。
今日のあれこれ
 今日は、ハンセン病に関する本の紹介、第一弾である。伝えたいことは多い。しかし深い。それ故に本の紹介含め、どれも中途半端になってしまったのではないかという不安がある。その分をこれから何回かハンセン病に関する本を紹介する事でカバーしていければと思っている。
 私自身はこの病気に罹った事で差別に直面した何人かの方と幸運にもお付き合いをさせていただくことが出来た。それだけに思うところは強いし、知らないゆえの差別の怖さをつくづく感じる。
 過去を尊重することは重要である、しかしそれに捉われるべきではない、と思う。そういうスタンスで関わって生きたいと思う。何よりも自分自身が後悔しないために。


西武。西口。九回2アウト。清水に被弾。残念!!!
面白いもので人といると自分の問題を少し忘れることが出来る。解決ではないけど、一日くらいはいいかな?と自分に言い聞かせる金曜日。

読んでくれた方一週間お疲れ様でした。ようやく週末。さて来週は何があるやら???
本日のお勧めリンク
http://www.mognet.org/hansen/index.html (モグネット内 ハンセン病のページ)
http://www.hansen-dis.or.jp/ (高松宮記念ハンセン病資料館)
http://www.hosp.go.jp/%7ezenshoen/ (多摩全生園)
http://www.hosp.go.jp/%7ekuryu/ (栗生楽泉園)

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