2005年5月15日(日)
no.23 本の運命 井上 ひさし 著
本の運命

井上ひさし著

文藝春秋 
390円+税
 
2000年発行
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本と貴方との関係は?

 人の本への関わり方は案外気になるものである。この本の著者の凄さ、自身の蔵書で図書館を作った、という話は永六輔さんの本で読んでいた。そして、彼に原稿用紙を使って欲しいと修行を重ねた紙漉き職人がいて、そして彼の存在を知った著者が再び原稿を手書きに戻したいうエピソードも同様に永六輔さんの本で知っていた。そして更に高校生の時、「4000万歩の男」という彼の作品を読んで感動した事があった。これは伊能忠敬が地図を作っていく様を日記風に本当に細かく書いていくのである。この細かさに感動した。著者の「百年戦争」も読んだ。これは猫とねずみの戦争に猫そしてねずみになってしまった子どもが巻き込まれる話。何ページにもわたってひたすら銀座の店の名前が出てきたとき。感動を覚えた。他に「吉里吉里人」もあるし…。

 これらの作品を読んで気付くのは筆者の資料の多さ、読書量の多さである。それがある故に筆者の本への関わり方を知りたいと思いこの本を手に取ったのである。

 個人の蔵書で13万冊である。レビューを毎日書いたとして…356年かかる量である。そこまで著者がどういう本遍歴を辿ったか、それが本書には書かれている。その中でもオススメは「井上流本の読み方十箇条」である。「おっと思ったら赤鉛筆」「本はゆっくり読むと早く読める」「栞は一本とは限らない」等等、著者が如何にして本と付き合っているかが良く見えてくる。更には古本屋の凄さも垣間見る事が出来る。著者等の著名人が如何に古本屋を活用しているか。またそこにどんな世界があるか。本の少しだが垣間見る事が出来る。
そして、個人的に印象に残った筆者の本との付き合い方、それはこの一言である。「本の新婚旅行」。筆者は本を買うと、それを持ち、喫茶店に入り、その本と半日位を過ごすという。その行為よりも、それを「本の新婚旅行」と表現した所に筆者の本への思いを感じるのである。

 このような「本」、「文字」というものは何故あるのか?筆者はこの本の中でそこにも思いを寄せている。そして言う。
【言葉を会得するという事は、自分の周囲にふつふつと湧き立っている無数にして無限の、無秩序な連続体に、言葉で切れ目を入れるということなのです。切れ目を入れることで世界を整理整頓し、世界を解釈するわけですね。このように言葉なしでは世界に立ち向かう事が出来ない。だから言葉が、書物が大切なんです】

またこれと同様の意味だが、本を読むことで自分の知っている物語を増やし、初めての事態に直面した時にその知っている物語にあてはめそれを整理し、対峙していくとも言っている。

 これなんかは「成る程なあと」思うのである。だから自分は最近、恋愛関係の本や、困難に陥った時の本を求めているんだと納得したと同時に、この納得も本から当てはめていると思ったり…。
著者は本との出会いはやはり、その出合い自体も、その影響も運命的であると説く。私も本と自身の生き方というのは、「成る程なあ」と思ったとおり、相互に惹かれあうという意味で、運命的であるのではと思うのである。

そんな事を感じた一冊である。
とてもコンパクトにまとまった読みやすい本である。文庫化されたためお値段もお手ごろ。色々な本を読む合間にこの本を読み、本と貴方の関係について考えてみてはどうだろうか?
今日のあれこれ
書評の調子がどうも今ひとつ。文の推敲が足りないような気がする。
鍛錬という言葉がある。この鍛には1000日の稽古、錬は10000日の稽古の意味があると中国の荘子は説いたという。
まだまだ先は長いなあ…。

最近、気持ちの波がいい。また現実と向き合うこともしていけるかなと思う今日この頃。
あくまでも自然体にいければなと思っている。でも恋愛は…暫くはご免だなあ(笑)
本日のお勧めリンク
http://www.town.kawanishi.yamagata.jp/plaza/index.html
(川西町フレンドリープラザ(山形県)筆者の蔵書で作った図書館があります。) 

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