お好み焼き、そして都市へ
今日は少し地域性の強い本である。ここの所、関西の方の本が続いているが、これは本当にたまたま…というか、第二の故郷である大阪になつかしさを感じているからである。勿論今いる埼玉も大好きではあるが、それとは別である。埼玉(関東)と大阪(関西)の違い、私が感じるのはやはりラジオである。ラジオはテレビよりずっとローカル色が強い。その為、その地域のみの番組が今だ存在する。僕の場合は関東なら永六輔の土曜ワイド、関西ならおはようパーソナリティー道上洋三です、がこれぞというものである。今はWEBで聞けるようにもなりつつあるが、やはりこのラジオを当地で聞くと、「居るな〜」と感じるもんである。これは音で感じる「居るな〜」感である。
その地域に「居るな〜」と感じるもの、他に何があるだろうか?私は大阪の方は淀川沿いの下町が第二の故郷である。その為、銭湯の存在にも強く「居るな〜」と感じる。このようにある場にも「居るな〜」感を感じる事が私にはある。
さて紹介に入っていく。この本はその『場にある「居るな〜」感』に関する一冊であると言える。神戸と言う都市にあるお好み焼きやさん、神戸に「居るな〜」と感じさせるお好み焼きやさんに関する一冊なのである。
本はお好み焼きやさんについて考察をしていくのだが、その流れが秀逸である。まず、神戸のお好み焼きの特徴でもある、地ソースについての考察から入っていく。(地ソース≒中小メーカーが作り地元で消費されるソース)
そして更にお好み焼きの特徴、混ぜ型(具と生地を混ぜる)とのせ型(生地をまず薄く鉄板に敷きそこに具を載せ更に生地をかけ、のせる)について、神戸でのお好み焼きのルーツ等から考察をする。
最後には、この焼き方の特徴から店の作りの特徴を考察し、現在の都市空間にはとって、どのようなお好み焼きやさんが必要か?という考察にまで至るのである。
惜しむらくは、本のボリュームである。非常に斬新な一冊なのだが、少しページが足りないと感じた。一つ一つの着眼点が非常に素晴らしいものだけにもっと詳しく読んでみたかった。しかし、考えようによってはそれもまたいいのかもしれない。このページ数により間違いなく「読みやすさ」は確保されている。それに加え、この本がスターターになる可能性もある。それにこのようなテーマで難しいのは資料の集め方であろう。それを考えてみればやはりこの本は読むのに十分に値する一冊であると言えよう。
本のボリュームが少し物足りない、しょうがないという所はあるが、しかし様々な発見がこの本からは得ることが出来る。地ソースの存在。神戸ではお好みの事を元々にくてんといった事。広島焼きスタイルはもともと関西にも存在したという事等等。先に資料の集め方は難しいと書いたが、これだけの事を書物と言う形で残した、ということにも意味があるような気がする。
最後に名前つながりで一つ思い出したこと。この本を読んで、神戸から大阪を思いつつ、思い出した味は「イカ焼き」であった。こちら関東で「イカ焼き」といっても「イカを焼いたやつ?」と聞かれどうも通じない。私も暫く食べていないがお好み焼きに近い感じのであったと思うのだが…。祖父、祖母と何度も食べた想い出がある。祖父亡き今、思い出の一品である。今度行った時には是非探してみたい。
久し振りに関西に行きたいな、そんな事を感じた本であった。関西の人も、そうでない人も読んでみては?新しい発見があること請け合いである。