2005年8月22日(月)
no.46 身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生 斉藤孝 著 
身体感覚を取り戻す
腰・ハラ文化の再生

斉藤孝 著


NHK出版
1019円
2000年
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コミュニケーションの第一歩

 斉藤孝氏の一冊である。実は彼の専門はこの身体論でもあったりする。そこから「声に出して読みたい日本語」そして今は「質問力」等コミュニケーションに関する本もだしているのだが、その著者の初期の作品である。氏のを作品を見てあの人のはちょっと…という人も是非この本を開いてみて欲しい。彼に対する評価も変わるのではないだろうか?彼の源流、深みを感じる事の出来る一冊である。

 今日の題にはそういう意味もある。氏が今コミュニケーションに重きを置いている、その正に源流、始めの一歩がこの本であると考えたからである。そして更にこの「身体感覚」について考える事こそがコミュニケーションについて考える第一歩であると考えてのこの題でもある。


 さてではこの本はどんな本なのだろうか。本の紹介に進みたい。
著者はこの本で日本人からは今かつて有った「身体感覚」が失われているという。それが腰・ハラ文化、そして更に言えばそれに関係する息の文化であるというのである。又この感覚が失われた事により、自己の中心感覚・存在感の希薄化が進んでいるとするのである。

そして更に筆者は本の中でこの身体感覚を再生する事を提唱し、その為には身体感覚を型などに基づく「技化」により、再生する事を提案するのである。

 身体感覚と中心感覚・存在感の希薄化の関係…と考えると少し腑に落ちにくいが、そこはこの本で面白い説明をしている。それが「からだ言葉」に関する考察である。

練る・磨く・研ぐ・締める・絞る・背負う

これらの語はすべて身体の行動を表す事が語の由来である。そしてこれらの表現を用いた語が今日使われなくなっている事を指摘するのである。そして、その為に、これらの表現を用いた語で表されていた、思考・思想は知覚される事がなくなり、(つまり言語化されることにより知覚化されなくなり)それにより表現されていた日本固有の精神や心が失われた、もしくはうまく認識されなくなったというのである。

更に言えば、これらの表現を用いた語はそれらが表す身体の行動が衰えた為に、そこから感じる感覚(=思想・思考)身体感覚が衰え、失われてしまったという説を展開するのである。

だからこそ、それの再生を目指し、その身体の行動を継承、若しくは復活させる為に、それを「技化」して残そう!と筆者は述べるのである。


さて、では何故これがコミュニケーションに通じるのだろうか?

彼の提唱した「技化」という考えがある。彼はこの本で「技化」について述べるのだが、この「技化」これはこの本以後の彼の著作でも一つのキーワードになっている。
例えば、「質問力」。この本でも質問する技術を「技化」し身に着けることにより、質問力をつける。それがテーマになっている。

この本に見られるように、人間の振る舞いそれは皆、基本は身体行動なのだから、という感じで、この「技化」を様々な身体行動(表現)つまり、恋愛行動、質問行動、整理行動など対象を置き換え、説明していくそれが彼のコミュニケーションを読み解く一つのスタンスになっている。(ちなみに声に出して読みたい日本語、これは日本語の力をよい文を読む事(つまり型)で技化することを意図した本だと著者も言っている。つまり言語活動の「技化」である。)

その事を考えると一つの考えが出てくる。それはコミュニケーションは身体行動(表現)の一つである、という事である。

以前に山田ズーニーさんの「考えるシート」を紹介した。(参考)
これもコミュニケーションをするにあたり、

1.自分の思い「自己」を問いを用い明確にする。
2.相手の事を十分に知る(≒相手の伝えようとする事を受け取る)
3.これら二つの事を十分にしたら、最終的に「自己」を相手に伝える。

という事を考えるシート(型)を用い「技化」した一つの例と考える事も出来るのである。

そう考えるとやはりコミュニケーションは「技化」可能であり、更に言えばそれは身体行動(表現)の一つである、と考える事も出来るのである。

そういう意味での今日のお題である。こう考えると、身体について考える事、それはやっぱりコミュニケーションの第一歩になるのである。これが正解、とは勿論まだ言う事はできない。しかしコミュニケーションにおいてそれに身体論的アプローチをかける事、これは十分に検討に値するのではないだろうか?

そんな事を考えさせられた一冊である。
ちなみに「技化」を説明する所などではテニスの上達の秘訣も書かれていたりする。これなどはいろいろなものに応用できるな!と思わず得した感を感じた所である。他の部分の取り上げているものが誰もが持っている身体だけあって、考えさせる、そして使える事が多い一冊でもある。

是非、読んでみて欲しい一冊である。
今日のあれこれ
本当にまあ、随分久し振りの更新である。というのもトップページには書いたが、現在日曜以外、毎日講習を受けている現状である。一日7時間半。ずっと図書館の話である。さすがに本好きの私も少々辟易する位のボリュームである。

そんなんで家帰ってバタンキューを繰り返していたので、更新できませんでした。
今日でようやく先が見えてきたのでノンビリ更新再開です。
セブンアンドアイも少しずつ更新していきます。
本格的な再開は9月になる予定です…というかそれまで講習が(泣)


しかし図書館等で使われているあの番号(記号)、アレの元になる十進分類表はスゴイですね!
それを使って分類番号をつけていたのですが、本当感動です!!うまくつじつまがあうように出来ているんですよ。
これはいつか機会があったら紹介します。


後思ったのは、ここの更新をする原動力。それは「孤独感」であるという事に気付きました。
話したい、伝えたい。でも色々あってそれができる相手がいない、もしくはこちらが伝えたい、話したいけどそれをする事が出来ない時、そんな時にここに文を書くんだなあ…と、そんな事をふと思ったりもしました。

なかなか…現状はよくならないんですがねえ。
まあ動き生きている、逃げていないのでよしとしよう!と思い、疲れつつ生きている今日この頃です。

動かんかねえ…。
神様、いつも祈っています。どうか救いがありますように。

選挙!単純に今の所(まだ公示前だから大丈夫?)当サイトは小泉内閣を支持しません。
もっと言えば自民党の多くを支持しません。
かといって、公明、民主、社民、共産いずれの政党も支持していません。
さて今度はどうするか…。私の場合、公明・共産はあまりにも基本的な路線が違うので除外ですが…
難しい選挙戦になりそうです。

皆さん、棄権も一つの権利ですが、是非投票に行きましょう!!

本日のお勧めリンク
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~saito/index.html (著者HP)

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