2006年5月4日(木)
no.59 温泉学入門 ―温泉への誘い   新コロナシリーズ 日本温泉科学会 編

温泉学入門
温泉への誘い

日本温泉科学会 編


コロナ社
1200円+税
2005年
上記画像はアマゾンへの
リンクです。

温泉
その実態は…


 GW。ゴールデンウィークが来ると一年の折り返し地点もまもなく、という実感が強くなるのだが、その折り返し地点に行く気力を養う休みとして案外この期間も捨てたもんじゃないと思う今日この頃。

今、テレビをつけてみるとどこの局でも、Uターンラッシュの様子を中継している訳ですが、そんな今日こそ、案外この期間中に言った人も多いかもしれないこの「温泉」について書かれた一冊を取り上げてみたい。


 さて、温泉。
「温泉とは何か?」この問いに対し貴方はどのような答えを出すだろうか?
私は今、目下温泉を題材に卒論を書いているが、その初めの頃、友人に聞かれて回答に窮した質問がある。それは

「温泉と井戸水の違いは何なの?」

という質問である。
これが分からない。

井戸水は冷たくて、温泉はあたたかい?
用途によって変わる?
掘る深さ??

そんな事が瞬時に浮かんでは消え、浮かんでは消えしたが、結局答える事が出来なかった。
そんな時に基本に戻ろうと思い、手に取ったのがこの本である。

 この本ではまず温泉に関する法規(温泉法)からの温泉の定義を説き、その後温泉の生成(地形面)についての説明をし、更に温泉の湯自体の説明(成分分析表を手がかりにお湯の性質の解説を試みる)、そして加えて開湯伝説、利用法などの文化に触れていく。

このような流れではあるが、その大半をやはり編集元が日本温泉科学会であるためもあるだろうが、温泉を科学で捉えていく、つまり成分・生成などについて重きをおいた構成になっている。
その為、総合科学かと言われるとやや疑問が残るが、科学的に見る、その中で科学で分かる性質を知るには、格好の一冊である。

 しかし、温泉の実態は非常に様々なものの入り組んだようになっている。そしてそれぞれの温泉がそれぞれ独自の成り立ち、現在の様相を呈している。
まさに、そのお湯が様々な成分が微妙に入り、一つとして同じ温泉はない、独自の効能を示しているのと同じようにである。

「温泉」。こう聞く私たちのイメージでは何となく「温泉像」はある。
そして又、懐かしい、癒されるというイメージもある。

 そのイメージに対し、様々なものが入り組んでそれゆえに応じる事が出来ているのが「温泉」である、といえるのではないだろうか?
人が持つ温泉という広いイメージ。それに対応するだけの多様性をもつものそれが「温泉」であるといえるのだと私は思う。

 実際そのような温泉を捉えていくという事で温泉学も今、総合学として、新たな局面を迎えている。具体的に言えば、温泉学会日本温泉地域学会など新たな学会が誕生したのも、その流れであると言えそうである。そんな中その一員として温泉を総合的に、「科学的」に見ていく事、これがお恥ずかしいが今自分がライフワークにしようとしている事である。

今月末から温泉法も改正され、またこの本で扱っている温泉の面でも新たな展開があると思う。それに備える意味でも是非、読んでみて欲しい一冊である。

※改正:加水・加温・循環装置の使用・入浴剤の添加・消毒処理の有無について明記するとともに、それらの処理を行っている場合はその理由を提示する事が定められた(5月24日より)
今日のあれこれ
 今日はこの欄でこの本に書かれている事を少し紹介。卒論の基礎の基礎資料として自分の手元にあるものを編集して一部分を載せてみたい。


温泉の種類(生成過程での分類)と定義(温泉法による)

 
1温泉の種類

(1)火山性温泉…火山の地下(数キロ〜十数キロ)にあるマグマだまり(温度800〜1200℃、マグマ・火山ガス・熱水などがある)→ここに断層が通じ、そこに水が貯まる。

※断層が地上までつながっている→地上に湧出。(間欠泉など)
※断層が地上までつながっていない→そこまでボーリングをして利用。
イメージは下図参照

(本6Pより引用)

(2)非火山性温泉…大半を占めるのは地下増温(100b深くなる毎に約3℃温度が上がる)による。この地下増温により地下にある水(水脈)が温められたものをくみ出したもの。
※理論上は1500bほど掘れば、地上の水温より+45℃高い温泉が掘れる。しかし現状はくみ上げ時に温度が低下し、湧出する温泉は低温で加熱が必要になる場合が多い。
現在都市部に新たに出来る温泉の大半はこのタイプに属する。

温泉になる水の種類
いくつかのものに分ける事が可能。

(1) 雨水などの天水が断層を通じ地下に至ったもの
(2) 地下に閉じ込められた海水(化石海水)
(3) 今ある海水が断層を通じ地下に至ったもの
(4) マグマが固まる過程で生じた(地下で出来た)もの(初生水)

温泉に成分が含まれる過程
温泉には様々な成分が含まれるが、それらは主に次のような過程を経て、それらの成分を獲得している。

(1) 火山ガスとの接触(ガスが充満し高圧になっているため溶け込みやすい)
(2) 地下の岩石との接触
(3) 由来による(海水が由来の場合)

2 法律での温泉

温泉法 第一章 総則
2条(定義)この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。

2 この法律で「温泉源」とは、未だ採取されない温泉をいう。

※注意※
温度は25℃以上

成分は下表

この中で特に治療の目的に供することの出来るものを「療養泉」と言い、それらには「泉質名」「適応症」などの表示が可能になる。(鉱泉分析法指針による。)その条件も別に定められている。

→昭和25年(1946年)制定。厚生省の医薬行政のとして考えられ、規律は地方の保健所が当たる。(しかし管轄は国立公園部管理課)(現在は環境庁所管・自然保護局)行政指導としては温泉の掘削と衛生以外は殆どない

(本3pより引用)
本日のお勧めリンク
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%B2%B9%C0%F4%CB%A1 (環境省内温泉関係のページ)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO125.html (総務省データベースより温泉法)

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