2005年4月29日(金)
no.7 脱正議論 小林よしのり著

脱正議論

 小林よしのり著


 
1121円
 
1996年発行
上記画像は
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組織の中での「あなた」とは何か?


安部英氏が亡くなった。薬害エイズ事件のキーパーソンの一人である。私にとっても”ある事”があり薬害というのは身近なものである。今回はこの本を取り上げたい。

 小林よしのり氏。もしかすると最も好き嫌いの分かれる人なのかもしれない。ゴーマニズム宣言の著者にして差別論、戦争論、台湾論と大作を書き上げてきた人である。私はその主張はともかくとして、彼の真実を追究するその姿勢には常に敬意を持っている。事実とは何か?それを追う姿勢、その中で生じた様々なものを背負う覚悟、中々出来ないものであると思っている。

 この作品は彼が薬害エイズの運動に関わっていく中で書かれた作品である。その中身は組織、そしてその組織の運動原理について考えたものであると言える。運動の根本にあるのは何か?共感か?同情か?学生にとっての運動とは何か?プロとは何か?人が一つの個を維持していく中で背負わなければならないものとは何か?

今でも通用するものとしてこのような考え方がこの本では示されている。
それはこのようなことである。
今の社会では、しっかり自立し、確固とした個(職能=プロ)を持たない人が学生の中などには結構存在する。そんな状態で自分に見合った自意識を持つならいいのだが、それを補完する為に何かの運動に属し、自己を差別化、正義の側に置き安心させる事(=組織やイデオロギーの威を借りた凡人の借り物の「個」を作る事)があるという。そして更に彼らはその組織を守る為、そのイデオロギーを守る為に動いていく事になる…。

 4月24日の本の紹介「今を生きる」で指摘した事、これもここに通じるのだと思う。「かわいそうな人」を助ける「自分」を確認しそれに安心する。今、私たち学生に必要な事はなんなのであろうか?自己の確立それはまさに己によって為されるべきであろう。

 恋愛も大事である。(勿論私も何時でも恋をしたい)学びも大切である。無くてはならないものである。しかし、そこに自己を見つけるとなると、場合によっては、それもやはりかりそめの自己になってしまうのではないだろうか?自己は自分の中から自分で動く事によって獲得されるものなのではないだろうか?

この一冊、学生必携の書、ともいえると思う。
安部氏が亡くなったこの機会、薬害エイズとは何かを考える意味でも、そして運動、自己とは何か?を考える意味でもオススメの一冊である。
今日のあれこれ
 クリスマスの夜に一人、ゴールデンウィークに予定がない…と何ともいえなく寂しくなる。こうなると面白いもので恋がしたくなるものである。同調圧力…難しい言葉がある。でもやっぱりそれなのかなあと思ったりもする。上で書いたとおり、そうすると「自分」は何処にいるの?という話になる。自分が不安なのかもしれない。ただ本能なのかもしれない。でも感じるのはこういう思い。「恋がしたい」と言う所である。

元来寂しがりやなのかもしれない。そういう思いを持ったり、憤ってみたり、そんな暖かい昼下がり。そんなこんなで命があること。これには感謝しなければと思っている。
明日は何かいい事が有るかもしれない。
そう思って明日へ生きていく。
逝った友に、そして生きている自分に恥ずかしくないように。
恋でなくても…いい出会いないかなあ?

タゴールの詩でこういうのがあった。(訳元不明)
※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

枕もとのランプが消えると
私は朝早い鳥と一緒に起き出て
緩やかな髪に花を飾り
窓を開いて坐りました。
バラ色の朝霧の中の道を
あの若い旅人がやってきました。
旅人は真珠の頸飾りを着け
冠には朝の光が射していました。
そうして私の家の前で止まると
熱烈な叫びをあげて私に聞きました。
「あの人はどこにいるのでしょう」と。
でもあまり恥ずかしいので、私には言えませんでした。
「それは私なのです。若い旅のお方、それは私なのです」と。

夕暮れどき、まだランプは灯らず
私はそわそわと髪を編んでいました。
沈む陽の光の中を
馬車を駆ってあの旅人がやって来ました。
馬たちは口から泡を吹き
旅人の衣服は塵にまみれていました。
私の家の前で車を降りると
彼は疲れきった声で私に訪ねたのです。
「あのひとはどこにいるのでしょう」と。
でもあまりの恥ずかしさに私には言えなかったのです。
「それは私なのです。疲れた旅のお方、それは私なのです」と。

部屋のランプが明るい春の夜。
南の風が和やかに吹き
おしゃべり鸚鵡(オウム)は籠の中で眠っています。
私の着物は孔雀の頸のような青い色
マントは若草の緑色
そうして私は窓辺の床に坐り
誰もいない道を見つめながら
暗い夜を一と晩中
「それは私なのです。絶望の旅のお方、それは私なのです」とつぶやきつづけるのです。
(Rabindranath Tagore; The Gardener 8)
※   ※  ※  ※  ※

愛する人と巡りあいたい。何処か遠くへ行きたい…
本日のお勧めリンク
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/fu/news/20050428k0000m060097000c.html (安部氏死亡の記事 毎日)

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