巨星落つ
一つの時代の終焉?
昨日こんなニュースがあった。
慎太郎都知事2016年東京五輪に名乗り(
読売)
2018年、有人月着陸再び…NASAが計画発表(
読売)
なんかこの二つのニュースが並ぶと面白いなと感じた。東京オリンピックに月面着陸…。戦後を振り返ると高度成長などかつての栄光ともいえる時代を物語る時に必ず出てくる二つのトピックスが時を同じくして並んだのである。
高度成長…。その中で間違いなく主役の一人であった人物が亡くなった。
そうダイエー創業者、現ホークスの産みの親、中内功氏である。

(在りし日の氏)
先日、「万博とストリップ」という本を取り上げたが、その際に三波春夫氏の生涯は日本の戦後そのものではないか?と言うような事を書いた。(
参照)
それを言うなら、中内氏は戦後経済を象徴する一人ではないだろうか?
戦後、高度経済成長と共に
「良い品をどんどん安く」をモットーにそれまでメーカーが持っていた価格決定権を消費者へ移すべく松下等の大企業とも戦い、その中で消費者の支持を受け、大量消費時代を先頭に立ち切り開くと共に、一大グループを築き上げた。
そのあたりの雰囲気は彼をモデルにして書かれたであろう、城山三郎氏の
「価格破壊」を読むと感じ取る事が出来る。この本に書かれている薬品業界との戦いの他にも実際には例えば松下との戦いでは独自ブランドのカラーテレビを開発(プライベートブランドの先駆け)。又食肉流通でも飼育から販売までを自社で管理し価格を抑える事にも取り組んだ。それらの手法は今日の流通の基礎になっているとも言える。
※千林商店街(http://www.senbayashi.com/)ダイエー、そしてニチイ(現サティー)の発祥の地である。
しかしバブル崩壊後、経済構造の変化、ワンマン経営等様々な要因によりダイエーは大変な危機を迎える。その際の危機が不良債権の問題でも大きな位置にあることからも中内氏が如何に巨大なグループを築き上げたかが分かる。そして現在ダイエーは産業再生機構の下、経営再建を続けている。
「価格破壊」はその栄光の(その中に悲壮さが見ても取れるのだが)時代を描ききった名作であるが、この転落の様も描ききった大作が佐野眞一氏の「カリスマ」中内功とダイエーの「戦後」である。
この本も前の本も彼の中での戦争体験を大きく捉えている。そういう見方を加えても、やはり彼は戦争あっての「戦後」を生きた主役であると言えるだろう。
こんな物を作ってみた。あなたの街のダイエーは載っているだろうか?
ダイエー全国マップ1 全国店舗表示
ダイエー全国マップ2 地域別店舗表示
これは現在のダイエーの全国の店舗を地図に落としたものである。
最盛期は更にこれに100店舗少し加えた店舗数を誇ったのである。
今回ニュースを見て気になったのは、中内氏の負の部分のみを取り上げ非難する論調が若干あったことだ。確かに彼の残した課題は多い。しかし功の部分をまたそれに比例し巨大なものである。彼のなした事、それと時代の流れが重なった上の事であり、彼一人の課題ではないと思うのである。総合的な、そして冷静な功罪の評価、そして新たな時代へのスタートを切らなければならないと思う次第である。
それがその彼の生きた、高度経済成長期の象徴である、オリンピックと月面着陸再び、という記事と共に語られる。このリバイバルは何を意味するのか?彼の死が象徴する一つの時代の終わりにという流れに抗する意識の表れなのか…と一人思ったりもした。
…と思っていたら、もう御一方である。この訃報を聞き、今日のタイトルを決めた次第である。

この事件、そう「あさま山荘事件」である。この時の主役の一人の彼もこの世を去った。

そう。この人、後藤田正晴氏である。「あさま山荘事件」の際は警察庁長官として、その指揮を執り、その前の学園紛争でも大きな役割を果たした。又今の行財政改革の一つの流れを作ったのも氏である。与党野党問わず、ご意見番として晩年はその存在を示してた。タカ派と呼ばれつつ、又一方では護憲派の重鎮であった。黒白ではなく、様々な人間色を感じさせる、深みのある人だったという印象をもっている。
彼の印象、私の場合は実は彼の著作の題により、鮮明に焼きついている。

「情と理」。運動、人の動きを考える際に、この言葉ほど考えさせられる言葉はない、と私はこの題を見たときに思った。この二つのバランス、それが人の動きの大きな部分をつかさどっていると思うのである。二元化、というかもしれない。しかしこの両方の概念がまた多くの変数を含んでいる事を考えれば、やはり一つの事の真を表していると言えよう。
この題の本を書いた人、そういう意味で彼には興味を持ち始めた。
彼もまた戦争を知る人であり、戦後の大きな流れを作った人であった。その彼も逝ってしまった。
そして今回の選挙…。何か一つの時代の変わり目に、そして戦後からの一つの時代の終わりが来ているのではと考えさせられる、二つの巨星の落ちた最近である。
自分の頭で考え、行動する。
その当たり前の事がそろそろ真剣に求められてきているのでは、と思う今日この頃である。
…と本の紹介と、雑感と、それに加えグーグルマップの実験と様々な事をやった今日の更新です。
お付き合いいただいた方、ありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
最後まで読みきれる文章だったでしょうか?お教えいただきたく思っております。もし最後まで読めた、という方は一押し頂けると参考になります。更に何か一言!という方はその後にもう一押ししてメッセージを頂けると嬉しい限りです。