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万博とストリップ 知られざる二十世紀文化史
荒俣宏 著
集英社 714円 2000年
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上記画像はアマゾンへの リンクです。
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♪こんにちわ、こんにちわ、世界の国から♪
今、愛知で「愛・地球博」が開催されている。もうじき終わるが、その終わる前に紹介したいのが、この本である。
万博と聞くと私は三波春夫を思い浮かべる。「世界の国からこんにちわ」「限りなき夢」日本の万博の華やかさと正にマッチするのが彼のイメージである。しかも戦後日本が復興してきたのと同様に、三波春夫氏の人生も復興の人生ともいえる。シベリア抑留という形で戦争を終え復帰し、浪曲から歌謡へ。ちゃんちきおけさ、五輪音頭を契機に人気もうなぎ昇り。あのきらびやかな衣装でのステージ、一度見たら忘れる事の出来ないものである。また、様々な分野にも進出。少し若い人であれば、ルパン音頭、恐竜音頭、しんちゃん音頭…。何処かで聞いたことのある曲があるのではないだろうか? 更に彼は読書家でもあった。聖徳太子に関しての著作もあるほどである。また晩年、永六輔氏と「明日咲くつぼみよ」という曲も発表したりしている。
このような流れを追っていくと彼の人生も日本の歴史に重なると思うのである。復興・高度成長・サブカルチャーの隆盛・更には高齢化・バブル崩壊での日本の価値を見直す、過去を見つめなおす…。このように彼の生涯を追うと、戦後日本のある一面が見る事が出来るといえる。
さて、話を元に戻す。今日はその万博とストリップの関係を紐解く一冊の紹介である。著者はあの荒俣宏氏である。博覧強記ぶりでは右に出るもののいない彼、その彼の一冊である。
万博とストリップ、一体どのような関係があるのか?それを紐解く為に、ストリップ、万博それぞれの歴史を追い、そこからそれらの交わりを解いていく、そういう本である。
万博、これが何故開かれたか?そこに筆者は、産業の発展、工業化の為のカンフル剤、需要喚起の効果があった事に言及し、そこから需要に必須の顧客、そして顧客を集める為のエンターテーメントとしてのストリップというようにまずは捉える。更に凄い所は、その工業化により人間観がある種の変容を遂げ、それがストリップが万博と結びつく要因になった、という事も言及しているのである。 (流線型というキーワード等を用いて…とここは本書で確かめて欲しい。)
又、日本の博覧会とストリップの関係にも触れられており、そういう意味でも面白い本であるとも言える。更に言えばこの項ではこのサイトでも紹介している注染に関わりの深い第5回内国勧業博覧会についてのストリップとの関係も記されているのである。
※日本の万博については当サイトでも何冊か取り上げた(その1・その2)橋爪紳也氏の著作に詳しい。
更にストリップの歴史については本当に知らない事だらけである。芸の一つとしてエンターテーメントとしてのストリップについて述べられていく。その起源をイギリス、フランス、アメリカに辿り、更にはそこでの見世物興行の流れについても抑えていく。出会いの場としての場所、そこにセクシャルなものが集まり、それが見世物にも取り入れられ、という事や、戦時中、抑圧されたもののはけ口としてのセクシャルな場、それとストリップの関係、こじつけという人もいるかもしれないが、様々な糸を手繰り寄せストリップの全体像を形作っていくのである。ちなみにその中で下の女性、知っている人は知っている、マタ・ハリも登場する。
(←マタ・ハリ…高校世界史で知っている人もいるのでは?)
この本の最も凄い所の一つ、それは題を見て「エッ!」と思う、その驚きに含まれている、と私は思う。ストリップを万博と関連づけて見る。その着想に脱帽なのである。この本の最初には早稲田大学の演劇博物館にストリップの展示があること、そこでGストリングス(女性下着の一種)を見た筆者が感激する様、其処に納められるまでの経緯を説明する所から始まるのである。著者、そしてこの博物館、知の探究心にタブーを設けず、先入観を持たず対象を扱っていく、その姿勢によりこの本が生まれたのではないかと思うのである。
そして、ある対象を丹念に見ていくと、そこに何かのつながりが出てくるのだと思う。それは一見してそうだと分かるような今日頭に使った、三波春夫氏の例であり、また、今回荒俣氏が書き出したストリップの例、様々である。
プロ(荒俣氏)の凄い所はそれを相手に納得させる為に、根拠(資料・論拠)を集めていく事である。そしてそれがどんどん広がり、更に他のつながりも見出していく。その過程に脳の発達の様子さえ(ニューロンの結びついていく様)私なんぞは想像してしまう。
その流れを体感できる一冊である。是非「イヤラシイ」と言う先入観に捉われず手に取ってみてほしい。
最後まで読みきれる文章だったでしょうか?お教えいただきたく思っております。もし最後まで読めた、という方は一押し頂けると参考になります。更に何か一言!という方はその後にもう一押ししてメッセージを頂けると嬉しい限りです。
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今日のあれこれ |
最近、打合せが多く、友人と会う間も捕られてしまう。若しくはここの文章と対極にある論文の書き方を師と学んでいるので、それも結構時間がかかっている。ただ稽古をつけてくれる師がいる、その事に感謝し、日々胸を借りている次第である。 (更新が滞っている言い訳…ではありません(笑))
楽しむ事。これってある段階までいかないとない、と思う。大学の周りで見れば、自分は興味がないから…、忙しいから…、と学びに背を向けたり、適当に取り組んでいる人を見る事がある。 単純に勿体無いなあ…と思う。
そら最初から興味はないし、下手ならつまらないし、時間もかかる。でもそれを乗り越えた所で見えてくるもの、もあるんじゃないかと思う。自分の可能性をもっと信じていいんじゃないかと思う。
恋のすべてが「一目ぼれ」とは限らないように。最初嫌だった奴がいつの間にか…という事があるように。
確固たる自分、なんてそうそう出来るはずはないし、そう考えれば個性だってそうである。天職だってそう簡単には見つからない。
嫌な事もやってみないと! 本当に嫌になるまでやってみたら! と、思うんだけど、体育会系の考えなのかなあ。
追記 資料収集で国立に行きました。 オススメはここ。多摩中央信用金庫の資料室です。三多摩の資料は目を見張るものがあります。 是非機会があったら…。
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本日のお勧めリンク |
http://www.psa-network.com/network.html (三波春夫PSAネットワーク)
http://www.kashu.ne.jp/minami/index.html (三波春夫オフィシャルサイト)
http://www.waseda.jp/enpaku/index.html (早稲田大学坪内逍遥博士記念 演劇博物館)
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http://www.gekijou.net/memorial.html (「全国ストリップ劇場案内」内日本のストリップ史 非常に細かくまとめてあります。このページ自体はそうではありませんが、リンク先に18禁の内容があります。) http://www.gekijou.net/memorial.html (舞姫辞典 文献紹介が秀逸です)
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