ここでは藍染めに用いる、藍についてその種類と、栽培方法についてみていきたいと思います。藍の色素を持つ植物は植物学上の分類では13種類存在します。それらを用いて、世界中で藍染めが行われていますが、その中で日本に産するものは「琉球藍」「蝦夷大青」「染物蔓」「蓼藍」の4種類です。ここではそれら13種類の植物から代表的なものを取り上げ、紹介をしてきたいと思います。また栽培法については日本国内で主に栽培されていた「蓼藍」を取り上げていきます。
今回は藍分を持つ植物でわが国の中で代表的な5つを紹介していきます。一つ目は川越を含め関東地方で主に栽培された蓼藍についての紹介。そして二つ目と三つ目は日本の鹿児島、沖縄などで使われた、琉球藍、アイヌの人が使っていたタイセイ。その次、4つ目はヨーロッパで使われたウォード。そして最後は、五つ目は主に古代インドで使われ、また明治期、日本で主に栽培されていた蓼藍より藍分の含有率が多いため、輸入され、使用されたインド藍。
藍と一言にいっても、その実態は様々。それを藍分を持つ植物の多様性の面から感じていただければと思います。
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(たであい) 蓼藍は1年草である。原産地は中国南部、若しくはベトナムと言われている。なお花の色が写真の赤いものと、白いものの2種がある。 栽培時期は、大体、2月下旬〜3月上旬に種をまき、8月頃に収穫をする。(藍染めは葉を使うので葉を収穫する。)その後、又伸びてきた葉を収穫する事もある。 |
【琉球藍】
(りゅうきゅうあい) キツネノマゴ科。一方琉球藍は多年草である。原産地は東南アジア。日本では沖縄で栽培されている。多年草の為、2,3年に一度株の更新をはかる。又夏と冬の年2回収穫する。 なお沖縄では蓼藍と併用して利用され、琉球藍を女藍(ミーアス)、蓼藍を男藍(ピーキアス)と呼んでもいる。 |
(えぞたいせい) アブラナ科の2年草。北海道=蝦夷で取れる大青なのでこの名前がつく。 北海道藍と呼ばれる事もある。アイヌの藍であったと考えられている。又、ウォードは別名ヨーロッパ大青と呼ばれ蝦夷大青と同じ、アブラナ科の植物である。 |
【ヨーロッパ大青】 蝦夷大青と同じくアブラナ科。ヨーロッパの他、古代エジプトで使われていたのもこの大青ではないかと言われている。 なお藍分の抽出方法は蓼藍と同じ方法がとられたという。 |
【インド藍】 マメ科の木。草でない為、木藍とも呼ばれる。明治時代になると、古来より日本の大部分で使われていた蓼藍より藍分の含有量が高い為、大量に輸入され蓼藍の栽培を衰退させる原因の一つとなった。なお藍分の抽出は琉球藍とともに泥藍といい蓼藍とは異なる方法で行われていた。 |
ここでは関東で主に栽培されていた、蓼藍について、その栽培方法を見てきます。また一部に著者がこれまでに関わった場所での栽培の様子の写真も使い、説明をします。そのため、古来の藍の栽培の様子とは異なる様子になりますが、その分は文章で補完していくかたちでご紹介したいと思います。
ここで藍の栽培が様々な手順を踏む、労力のかかる植物であることをご理解いただければと思います。
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@種まき、間引き 3月上旬、良く耕した苗床に種をまく。なお種は鳥のえさになりやすいので、発芽するまでは藁をかけるなどして苗を保護した。苗が2〜3センチになったら弱い苗を間引く。 |
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A定植 約2ヶ月後、苗が17〜20センチに成長したら5〜6本を一株にして40センチくらいの間隔で定植する。 この際、根を洗い病気などにならないようにするという。 |
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B追肥、水やり 成長にあわせ、刈り取りまでの間に何度も追肥を行う。また藍は水を好むので常に水遣りを怠らないようにする。肥料にはいわしをほしたものや、ニシンをほしたものが適していたという。 |
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C刈り取り 藍が開花直前になったら晴れた日を選び、根元10センチ程を残して刈り取る。これを一番藍という。又その後再び6,70センチ程度に成長したら刈り取る。これを二番藍という。藍染めには一番藍のほうが適しているという。 |
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D藍粉成し 刈り取った藍は天日に干して乾燥させ、1.5センチくらいに刻み、その後図のように、唐竿でうったりして葉と茎に分ける。これを藍粉成し(あいこなし)という。その後葉の部分で「すくも」をつくる。なお、関東地方では茎も用いる事があった。 |