藍に関する信仰

 最後に藍染めにまつわる信仰を取り上げたいと思います。藍染めに関わる職人の多くは愛染明王を信仰しています。愛染明王は字の通り、愛情・情欲をつかさどり、愛欲貪染をそのまま浄菩提心(悟りの心)にかえる力をもった仏だといわれています。そのため一般に水商売の人に信仰されています。
しかし、音が「愛染」=「藍染」と読める事や、色彩を与える力を有すること、更には「台座の宝瓶」を「藍甕」にみたてられることこれらの理由により、多くの藍染めの業者が愛染明王を信仰しているのです。そのため、愛染明王が祀ってある寺院へ参る講なども藍染め業者などにより組織され、中には今日も続いているものがあります。更にその寺院には藍染め業者によって奉納された石碑なども見ることが出来、藍染め業者が愛染明王に対し、深い信仰心を持っていたことをうかがい知る事ができます。


愛染明王(相澤家)

半纏染めを行っていた相澤家蔵の愛染明王の掛け軸。台座の宝瓶のところを良く見ると、藍がめに見えなくも無い。
これらは仕事場や床の間にまつられていたという。

愛染様(島田家)

こちらは愛染明王の像である。この島田家の場合は掛け軸に加え、この像をまつっていたという。ちなみにこの像は一度も塗り替えをしていないという言い伝えが残っているようだが、それも染色の神である愛染明王に関係があるようで興味深い。

日曜寺からの愛染様(安藤家)

これは愛染明王を祭っている日曜寺という寺院から貰ってきた札である。これもやはり、仕事場や母屋の床の間にまつられることが多かったという。

日曜寺にある藍染め職人により奉納された石碑

愛染明王をまつっている光明山愛染院日曜寺(東京都板橋区大和町)にある石碑である。この石碑は東京にある講により奉納されたものである事が読み取る事が可能である。

東京藍染講記録簿(相澤家)

八潮在住の藍染め職人相澤兼吉が中心となり昭和34年(1959年)に結成された。当時は東京にすんでいた為、東京という文字がついている。常時30名ほど加入し、一定の金額を納め、定期的に日曜寺に参詣をしていたという。



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