2005年5月4日(水)
GW特別企画 連続芋づる式第一回「まちシリーズ」その3
(no.12)成田不動の歴史 村上重良 著 /門前町 藤本利治 著 

成田不動の歴史

村上重良 著

東通社出版部
500円
1968年発行
門前町

藤本利治 著

古今書院
(価格不明)
1970年発行

本は自スキャンです。掲載に問題ある場合は恐れ入りますがご一報を→メール
なお、写真は管理人撮影

おけいはん?なりたさん?

 今日の本はいずれも絶版。購入不可の為、アマゾンへのリンクが無い。その為の自スキャンである。(といってもデジカメ撮影だが)何卒、ご勘弁願いたい。

 町は如何にして出来るのであろうか?町を構成するのは人である。ということは人が集まるところに町が出来る、と考える事もそんなに的外れな仮説ではないだろう。人を集める事についての考察といえば今回の「まちシリーズ」その1で紹介した集客都市もその一つである。そして昨日は集客するものの一つとしての野球場について考察されている本、南海ホークスがあったころを紹介した。今日は時間軸をずっと戻して集客するものとして寺社を考えてみたい。それで紹介するのがこの2冊である。

 門前町といって浮かぶキーワードといえば…伊勢神宮、善光寺、出雲大社とあるが、私は現在は関東に在住のもの、今回は成田山新勝寺を取り上げる。では門前町とはいったいどういうまちなのであろうか?藤本氏の本「門前町」では次のように定義する。

【信仰の対象が全国的に拡大され特色ある景観をなすに至っているもの】とされる。では特色のある景観はどういうものか?ということを考えると、特色ある景観≒寺社門前の町並み(宗教者若しくは商人が集住)ということに成る。
寺社門前に町が出来るのはその宗教的な集客力に加え、そこに住む人の、滞在する人の消費を満足させる為という側面もある。それを考えると寺社の門前は純粋に宗教的機能のみで成り立つのではなく、【寺社の参詣客を対象として旅館・飲食店・みやげ物店。娯楽施設などが寺社の門前の街道の両側に発展している】=寺社門前の町並みと考える事が出来るのである。

日本でこのようにいくつも門前町が発達した理由について著者は信仰の形をあげる。日本は部落の住民の信仰対象が氏神のみの為、それは宗教的渇望を満足させるものでなく、また縛りも少ない。それにより、より広域的な霊験あらたかな寺社が成立する。そしてその寺社の消費を満たす集落の成立、また不輸不入権などを寺社が得る中でそれが大きくなり、それと参拝者が結びつき、観光的要素も踏まえ寺社前が門前町に発達するとしている。本書ではその論を主に伊勢等の事例を挙げ説明していっている。


 さて成田の場合だが、成田の場合面白いのはその拡大に流れである。元来はその地に観光地的要素(遊郭、成田参拝の客は船橋の遊郭で遊んだ)をあまり含まないものだったのだが、発展の中で近世以降、寺が積極的に関わっていく事になる。鉄道の設営に関わったり、寺の中に公園、玉突き場を作ったり…。ご利益も時勢に合わせて、どんどん変わっていく。戦勝祈願を行ったり、自動車の安全祈願を行ったり…。これは新勝寺が元来、真言宗で現世利益があるものであるが、それにしても正にうまい事世渡りをしていくのである。
(江戸期の発展も歌舞伎俳優市川団十郎との関係があったり、近隣の佐倉藩との関係をうまくつかったりしている。詳しくは上の本、「成田不動の歴史」等を参考に)

 さてさて鉄道。上の写真のトンネル。これは実は鉄道用のものであった。成田山と近くにある、観光名所(義民佐倉宗吾に関係するもの)等をつなぐ鉄道として整備されたものである。更に成り立ちは又別だが京成電鉄。あれも成田山への参拝客のために出来た私鉄である。
このように寺社が鉄道を敷設する一つの原因になっていたのである。

そして昨日の問いにつないでいく。昨日は

阪神→甲子園、阪急→西宮、近鉄→藤井寺、南海→大阪球場と来てあと1社、関西私鉄の大手がありません。それは何処か?そしてその社は球場の変わりに何を用いたのか?

という問いを立てた。(参照)その私鉄は京阪である。実は京阪、球場の変わりに今日取り上げた成田山を用いたのである。成田不動の歴史には次のようにある。

京阪電鉄は昭和初年には経営面で成績があがらず、学校を誘致するなど沿線の開発策を講じていた。同線の沿線は大阪市の北東の鬼門にあたる事から他の私鉄に比べ住宅等の誘致が進まなかった事もあって、会社をあげて別院(成田山)建立に全面的に協力する事になった。同会社は別院の為に大阪市郊外の香利経営地の一画7000坪を寄付し…(昭和11年に完成した。)】(pp338)

この場合は成田山が球場の変わりの集客施設として扱われている。しかも寺が鉄道を引き寄せた関係から、鉄道が寺を引き寄せる関係へとの変化も見ることが出来るのである。

そしてこの寺と球場を集客という概念が結ぶのである。

おまけ
更に言うと、京阪電車に乗ったことのある人は気付かれていると思うが、京阪電車にはお札が祀られている。そしてそのお札は…成田山のお札なのである。それには上のような理由が…。という所で今日は終わりにしたい。
今日のあれこれ
 GW。私の一日。朝起きて、本読んで、これを書いて散歩。何かとっても落ち着いた日常。でも何か物足りない…なんだろう?こんな文でも書き終わるとへとへとになる。今日の反省は本のつながりを意識したせいか、本の紹介がいつも以上にうまくいかなかった気がする。読んでくれた方。何卒ご容赦を。そして読んでいただき感謝です。

 感謝。剣道でよく言われる言葉で「勝って反省、打たれて感謝」という言葉があったと思う。これが体に覚えこまされたのか、人間関係でもめた人へも、その時は「あのやろう」と思ったりもするけど、時間が経つといろいろな澱が沈んでいってやはり感謝が残る。お人よしな馬鹿なのかもしれない。よく言われる。でも、「ま、いっか!」で明日へ進んでいく今日である。
「ま、いっか!」この一言をうまく、味があるように使えるのは…森山良子さんだろう。彼女の「ま、いっか!」を聞くとそれが、すーっとはいってくるのが分かる。月曜〜金曜11時過ぎに聞くことが出来る。是非一度聞いてみて欲しい。(http://www.tbs.co.jp/heartofpops/
 
物足りないと感じれる日常にも感謝。そしてやっぱり読んでくださった貴方に感謝です。
本日のお勧めリンク
http://www.kanshin.jp/rojiura/index.php3?mode=keyword&id=311024
 (路地裏旅行者内私の大阪(3)より お札見てください)
http://www.kanshin.jp/rojiura/ (路地裏旅行社のHP )
なんとなく…永六輔の「宇宙遊泳も買い物に出かけるのも旅です」「曲がった事のない横町を曲がるのが旅です」という言葉を思い出した。

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