「これから」の針路を示す羅針盤
山田ズーニーさんの新刊である。ここでは過去に彼女の著書
「伝わる・揺さぶる!文章を書く」・
「あなたの話は何故「通じない」のか?」の2冊を紹介してきた。それぞれの本については紹介文を読んで見て欲しい。さて、では今回の本の薦めるべき点は?という事になる。
そこで今日のテーマ、
「これから」の指針を示す羅針盤である。
ズーニーさんの文を作っていくレクチャーのポイントは「?」である。問いを立て、考える事で自分と向き合い、自分を知り、そして相手の事を考え分を組み立てていく、それが3つの本に共通しているテーマであると私は考えている。この本では、特定のシーン毎に、考えるシート、つまり「?」・問いをシートに整理し、それらを考える際のポイントが提示されるという構成をとっている。
それを聞くと、ハウツー本なの?という問いが出てくるかもしれない。しかし著者も言うとおりこれはあくまでもシートである。これを自分なりにたたき上げ作り上げていく事が可能である。そういう意味では考える際の考え方の原料とも言うことができようか?
原料。これって結構大切である。人は何度か経験をした事に対しては、その経験に基づき行動する事が可能である。しかし未経験のことに対してはそれが当然不可能になる。あくまでも類似した状況・あるいは耳学問等から使える情報、経験を引っ張ってくるしかない。
例を挙げてみよう。謝罪文、貴方は書いたことがあるだろうか?私は最近思いもよらぬ展開から謝罪文を書く機会があった。今ならいくらかその意味を見出す事が出来るが、その当時は正に突然湧いた災難。ただ周りに迷惑をかけたくないのと、その事件でなんか、どの人も中途半端な関わりをしているという感を受けたので自分だけでも最後まで自分で責任を取りたいという思いがあり、筆をとる事になった。さてその晩。書こうにも文面が浮かばない、混乱・怒り・悲しみ云々。そんなものがそれこそサラダボールのようになり…。結局その時はある別の本の文例を参考にし考え、なんとか完成することができたのだが。
特にこういう手紙の場合、迅速さが肝要である。でも自分は錯乱状態。もうどうしていいか全く解らない状況である。でも書かないといけない。そうするとまたそこで悔しさ等が出てきて、という堂々巡り。今になって思うのはそういうときこそ、考える、整理する事が必要である、ということ。そういう意味で考え方の原料って大事だと思うのだ。
考えたり整理するとほんの少し冷静になる事が出来る。
さてまず自分は何をしたか?
何が相手が傷ついたと感じる原因になったか?
ではその行動を自分は何故したか?
今自分は何を後悔しているか?
相手に対して自分が出来る事は?
こんな感じで現状を整理していくと、自分の悪くない所が見えてくる。それに安心する。そして問題点も見えてくる。これは相手に謝ることが出来る。そうしてほんの、ほんのちょっとだが落ち着きを取り戻す事が僕の場合は出来た。
こんな風にに考える事はその錯乱状態に何らかの道筋をつけることにもつながる。自分を客観視したり、これからどうしようかということについて考えたり…。悩みという状況の辛さには
「出口が判らない・見えない・見つけられない」などの要素もあると思うのである。それを作文する事、その為に問いを立て考えを出し、整理する事により見通し、そこまでいかないかもしれないが、少なくともその時点で出口へ歩み始める事が出来ると思うのである。
まだ経験した事のない問題、あるいはちょっとした難題にぶつかると、人は他の興味ある事に逃げてしまったり、それとの関係を遮断したり、先送りにしたりする。
この本の中に次の一節がある。
【
『早く解消しようとする迷走』
悩んでいる人の中に、ちょっと依存気味だな、と感じる人がいます。占いを何件もハシゴしたり、信頼する人からいつも、いつも答えを聞きだそうとしたり。…そういう人はしばらくするとまた、同じ次元で悩んでいるように思います。
悩みは複合している。
悩んでいる今の状況は、どこかで自分に似ている。と私は思います。】
私は今の現状を打開したいと思っている。そこから逃げるつもりは毛頭無いし、例え味方がいないとしても、皆その場に執着していないとしても、私はその場が大事だと思うし、そこに可能性はまだあると信じている。だから最後は「動き出す」。
私は逃げない。
…と少し力が入ってしまったが、いずれにせよ難題から目を背け、迷走したくはない。だからこそ考え、行動しなければと思うのである。
本に戻る。
コミュニケーション。表現をするという事は今の自分を見つめ、それを出す事。そしてその際には自分の意志つまり、進むべき針路も明確化されていく。この本はシーンに応じて、その場をしのぐ為の本なのではなく、そこをスタートとして進んでいく為の本であると思う。
この本の最後にはこうある。
あなたの出番です。
行き詰った時にオススメの一冊。そして日頃からあるコミュニケーションを鍛える為のオススメの一冊。更にもしもの時に備えてのオススメの一冊である。
是非是非手にとって欲しい。